スピーディな処理が目的の少額訴訟制度

スピーディな処理が目的の少額訴訟制度

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日常生活の中で稀に、当事者同士では解決できないような金銭トラブルに巻き込まれることがあります。

その場合は裁判での解決を模索しますが、ただ裁判になると判決までに長い時間がかかります。

また、出廷などの手間がかかるため、仕事へも悪影響を及ぼします。

そんな金銭トラブルを速やかに解決するために設立されたのが「少額訴訟」制度です。

少額訴訟とは

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払い請求に限定される訴訟のことです。

少額訴訟は1回の審理でその日の内に判決を下すことが原則であり、一般市民の間に起きた小さな金銭紛争を短時間・少費用で解決することを目的としています。

即時解決を目指すため、契約書や領収書などの証拠書類や証人はその場ですぐに審理できるものでなければなりません。

そのため、少額訴訟で争われる案件としては、賃金の不払いや賃貸住宅における敷金の返却、知人同士の借金の返済などが多くなっています。

なお、少額訴訟を利用できる回数は、原告1人が同じ裁判所に年間10回までと制限されています。

このことは、頻繁な少額訴訟の申立てが予想される消費者金融業者などの利用を抑制し、一般市民が利用しやすいようにするためです。

少額訴訟の手順

少額訴訟は以下の手順で進められます。

1)訴状の提出
訴えを起こす人(原告)が少額訴訟の審理を求める訴状を簡易裁判所に提出します。

2)呼出期日の通知
訴状を受理した裁判所は最初の期日を決め、原告と被告(訴えられた人)の双方に通知します。

3)証拠資料の提出
原告及び被告は最初の期日までに、裁判所に対し全ての証拠資料を提出します。

被告は言い分があれば、答弁書や証拠資料を裁判所に提出して異議を主張します。

原告は被告が主張した異議に対する反論があれば、裁判所に新たな資料を提出します。

被告は呼出期日に出席できない場合、答弁書を提出して担当の裁判所書記官に相談します。

仮に、答弁書を提出しないまま裁判の期日に出席しないと、原告の言い分通りの判決が出されるようになります。

なお、少額訴訟手続きによる審理を希望しない場合は、簡易裁判所の通常の手続きによる審理を求めることができます。

4)審理と判決
裁判所は最初の期日において事前に提出された書類や証拠に基づいて審理し、当日に原告と被告に判決を言い渡します。

5)判決の確定
判決を受取った日の翌日から起算して2週間以内に当事者から異議の申立てが無いと判決が確定します。

判決の確定後に判決の内容を争うことはできません。

また、少額訴訟制度による確定判決に不服があっても、控訴することはできません。

まとめ

過去、金銭トラブルがあった場合は金額の多寡に関わらず、通常の裁判で決着させるしかありませんでした。

何百万円以上の高額な争いであればまだしも、40~50万円程度の金額だと裁判にかかる手間や費用などを考慮すると、割が合いません。

そのため、裁判に訴えたくても泣き寝入りすることが非常に多くなっていました。

そんな状況を改善するためにできた制度が少額訴訟制度です。

少額訴訟制度の特徴は1日で結審することです。

また、訴訟の対象金額が60万円以下に限定されています。